シニアためのスピード・デートと呼ばれるイベントが自治体主導で行われており、このところ人気を得ている。
普通のデートであれば相手をあらかじめ知っていることが前提であるから、もしかするとこのイベントはスピードお見合いと言ったほうがいいかもしれない。実際には1対1のお見合いではなく、5対5のグループお見合いである。スピードと付くのは1対1のコミュニケーション時間を短時間に押さえていることに由来する。
やり方は至ってシンプルである。一回の定員は10名。名札を胸に付けて円卓を囲んで座る。それぞれ隣の人と10分間話をする。そして時間が経ったら席を交合に移動し、新しく隣になった人と10分話をするということを何度か繰り返すのである。テーブルにはタイマーが用意され、会の進行役が「はい、席を移ってくださーい」と時間の合図をしてくれる。
初対面の人と何か会話を、と言われても共通項がなければ普通はなかなか話せるものではない。そこで会話のヒントとして主催者からあらかじめ渡された3つのアイテムが書かれてある紙を手にし、隣の人と話し気になることがあればメモしていくのである。3つのアイテムとは、
– 好きな事(料理をすること、食べること、散歩すること、動物、自然など)
– カルチャー(映画、博物館、本など)
– 家族(シングル、既婚、同棲、子供、孫、ペットなど)
デートというと男女のパートナー探しをイメージするが、ここでは必ずしもそうではない。隣に座る人は同性のこともあるし、異性のこともある。参加する男女の割合を半々にしていることで男女がうまく混じるという程度である。実際に参加者へのインタビューでも恋愛を求めて来ていると答えている人は皆無で、「もう自分は人生において異性とは充分にお付き合いしたから」と言い切る人もいて、なんだか微笑ましい。ほとんどの人が「新しい友達」を作るためであり、もし友達以上の関係になりそうな異性と出会えたら「それはめっけものね」と大笑いしている。
古くからの友人も良いが、刺激を求めて新しい遊び仲間や語らい仲間ができたらということである。そして知らない異性との会話はちょっとしたドキドキ感もあり楽しみだという要素もある。
これまでに参加した人はこのイベントで知り合った者同士、一緒に映画を見に行ったりちょっとした遠出をしたりしているそうである。参加者がその自治体の住民でなくてもよい事が、もしかするとキーなのかもしれない。かなり遠くの地域から参加している人も何人かいた。知った顔を見るのは嫌だという人もいるだろうし、その後再会するにはわざわざ別の地域まで出向く必要があるわけで、それが逆に楽しいことなのかもしれない。 そもそもこのようなイベントに参加しようとする人々は冒険心の強い人達だろうが、それでも背中を押してくれるきっかけがなければ新しい知り合いなど作りにくいものである。一般の新聞や広報誌にはたいてい「求ム」のページがあり、そこには年齢に関わらず(定年を迎える60歳代は非常に多く、80歳代の人のもあったりする)、お茶友達から真剣なパートナー探しまで様々掲載されている。しかしそうではなくて自治体がオープンに開催しているイベントであれば、健全なイメージで本人も家族も安心して友達や知り合い作りにチャレンジできるのかもしれない。
このイベントは好評で月一度のペースで去年から続いている。