ここ近年、至る所でレインボーカラーの飾りつけを目にする。
レインボーカラーはプライドパレードに代表される通り、ジェンダーフリーを支持している事を意味する。この度、ジェンダーつまり男女の性をあえて区別しない教育に取り組む保育園(公立)を訪れる機会があった。
どういう教育をしているかというと具体的には、園内では男の子、女の子に相当する単語は使わない。代名詞「彼(Han)」、「彼女(Hon)」は中間の「Hen」という造語で呼んだり、「お友達」と呼ぶ。
そして男の子には例えば車のおもちゃを、女の子には人形やぬいぐるみ等を与えがちになるがあえてそうではなく、子供達に両方与え好きな方で遊ばせる。園に置いてある絵本もお姫様が出てくるような典型的な内容のものはなく、動物が主体になっているものが多い。家族を題材にした絵本であればシングルマザーが出てきたり、同性カップルの親が出てくるようなものをあえて選んでいるという。
つまり、周りの大人が子供に対して、この子は女の子だから、男の子だからというレッテルを貼ることを意識的にやらないようにしましょうということらしい。
この教育方針が開始されてから7年経つが、特に都会の若い世代の親達に人気があり入園の希望は後を絶たない。「女の子はこうでなければならないという周囲の期待に応えるのが苦しかった思い出があるから」という母親もいれば、「単に近所だったから入れた。こういう考えは時代の自然な流れだし、ポジティブに受け止めている。だけど家では特別なルールは決めていない」という親もいる。どの親にも共通しているのが、子供を型にはめない自由な発想に基ずいた教育法に魅力を感じていることだという。
しかし保育園以外の社会とも接して日々成長する幼児が、必ずしもこの保育園の目指す方向通りにリアクションするとは限らない。子供自身が「自分は女の子」、「男の子」と認識したら?実際に園内の壁に貼ってある仲良しグループの名前リストに「リトル・ガールズ」というのがあった。4人の5歳女児のグループ名らしい。保育士に「こういうのはどう対処するの?」と尋ねると、「子供達自身が好きにグループ名を決めているので、それをあえて直そうとはしない」との返事であった。
当然この教育法は行き過ぎだという声もあり、全ての人の賛同を得ているわけではない。性別は一つのアイデンティティでありそれは4歳ごろから芽生えるらしい。このアイデンティティを持つこと自体が子供の育成に不可欠であるという専門家もおり、この教育法を疑問視する意見も多い。
しかし、こういう特色のある保育園があっても良いと自治体は判断している。シングルマザー、シングルファーザーの元で育つ子もいるし、両親が同性の子供もいる(審査をクリアすれば同性カップル間で養子を持つことは合法)。両親が外国人の親を持つ子もいるし、障害を抱える子供もヘルパーさんの手をかりて一緒に遊んでいる。ダイバーシティを「ダイバーシティ」と意識せずに共存できる社会を幼児の頃から経験している子供がここにはたくさんいる。