夏時間制度を廃止したいフィンランドのジレンマ

夏時間制度(サマータイム)は長年世界各国で導入されてきており、経済的効果が高いということで日本でも検討されている。しかし、ここにきてフィンランドが1981年から採用してきた夏時間制度を廃止しようという動きに出ている。昨年は民間主導で廃止への署名運動も行われているし、国会でも過半数以上が夏時間廃止に賛成を示している。廃止を訴える理由は、年に2度(3月と10月の最終週末)時計の針を夏時間/ノーマル時間(冬時間)に調整することによって健康を害される人々がいるからだという。公表では「健康を害する」の詳しい内容がないので憶測するしかないのだが、どうも「面倒に感じている」というのが本音のようだ。たしかに家の中だけでも壁の高い位置に掲げられた時計の針を1時間進めたり戻したり椅子に昇ってやる作業は思いのほか面倒なことである。お年寄りならなおさらそうで、怪我をする人もあるだろう。学校やオフィス、公共の場所にある時計の数となるとさらに大変である。どこにでも電波時計が使われていそうなのに何故か普及していないのである。
夏時間廃止の理由にはタイムゾーンを中央ヨーロッパ諸国と合わせたいということもあるだろう。フィンランドは中央ヨーロッパ諸国より1時間早い時間帯である。ノーマル時間を通年採用することにより他国のサマータイムと同じ時間帯になる。
しかしながらフィンランドが夏時間制度を廃止したいと叫んでもそれを施行するにはEU委員会の承認が必要なのである。EU委員会のリサーチ(2014年)ではEU諸国のほとんどが夏時間採用には賛成としている現状がある。その一方で、タイムゾーンの決定は各国が自由に選択できるのだ。つまり、フィンランドは夏時間廃止と自国のタイムゾーン変更を組み合わせて、中央ヨーロッパと時間の足並みを揃えていこうと考えているのかもしれない。
果たしてEUの承認が得られるかどうか。同国のベルネー交通・通信大臣は「他のEU諸国も夏時間廃止を訴えるフィンランドに追随して欲しい」とツイッターでアピールしている。ちなみに隣国ロシアは2014年より夏時間制度を廃止している。

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