北欧諸国の牛乳の消費量は、スウェーデンが平均1人当たり1週間 1.5 リットル、フィンランドに至っては 2.3 リットル(2016年)(*1)と、日本人の1人1週間 0.6 リットル(2012年)(*2)に比べて非常に多い。そんなフィンランドの最大手乳業メーカーはヴァリオ社 (Valio、1905年創業。www.valio.se) 。同社は牛乳、ヨーグルト、チーズ、バター、プロテイン飲料、アイスクリーム等の従来の商品だけでなく、2001年からは乳糖不耐症の人に向けに、独自の製法で乳糖(ラクトース)を排除したラクトースフリーの乳製品を数々出している。現在ではその品目は450以上にわたり、ラクトースフリー分野では先駆者的な存在である。このヴァリオ社が今回、コアとなる牛乳から離れ、燕麦(エンバク(オーツ麦))をベースとした健康飲料の販売を開始した。「オッドリーグード (OddlyGood, 「不思議と美味しい。あらっ、美味しい」という意味)」というネーミングで、パッケージも写真のとおりポップなイメージである。主原料のオーツ麦は日本では馴染みのないものだが、欧米諸国では朝食のオートミール(粥)のベース材料になっており、頻繁に登場する食品である。オーツ麦は見た目は押し麦のような感じ。昔から食用されてきたものだが近年特に菜食ブームや健康ブーム(ビタミン、ミネラル、植物繊維が豊富)でさらに注目を浴び、どこのスーパーでも大量に積み上げて売られている。とは言えオーツ麦そのものは無味に近いので、例えばオートミールには果物やジャムやナッツを載せて食べたり、シリアルと一緒に食べる人が多い。
このオーツ麦を使った飲料は実は他社でも数年前から商品化しているのだが、パッケージデザインや広告などが一部のオシャレな若者向け的なので、根っからの菜食主義の人が牛乳を避けるために購入する程度で、あまり一般受けしていない。結局、菜食主義でない乳糖不耐症の人の多くはオーツ麦ドリンクよりもラクトースフリーの牛乳を購入しているという。
それが今回、ヴァリオのような現地では知名度があるメーカーが牛乳に代わってオーツ麦を原料としたヘルシー飲料の製造に本格的に取り組むことを発表した。乳糖不耐症や牛乳アレルギーを持つ人が増加していること、そして菜食主義というわけではないが、植物由来の食品を好む人が急増していることを理由に挙げている。ほとんど味のないオーツ麦をいかに美味しく飲みやすくできるかがキーだが、新しく登場したのはさらっと飲めるタイプとヨーグルト的なこってりした食感のものの2種類。そしてそれぞれにラズベリー風味、マンゴ風味、バニラ風味、それから味を加えていないナチュラル風味のチョイスがある。「北欧産」のオーツ麦を謳っているのも大きなポイントである。食品偽装や過度な農薬使用の食品輸入が近年問題になっており、国産の食品(許容範囲として北欧諸国)を好む人が多いのである。ナチュラル風味のオーツ麦ドリンクは味がニュートラルなので、スムージーのベースや料理に加えたりパンやケーキの材料にも使える。低脂肪で食物繊維が豊富なので試してみる価値はありそうだ。すでにアジアで豆乳が定着しているように、オーツ麦ドリンクが北欧で定着し願わくば全世界に広がって欲しいものだ。
(*1) International Dairy Federation
(*2) (社団)日本乳業協会 http://www.nyukyou.jp/cgi/dairy/index.cgi?rm=result&qa_id=256