北欧の画家:ゲルダ&エイナール・ヴィーグナー(デンマーク)

2015年に公開された映画「リリーのすべて(The Danish girl)」で注目をあびた女流画家ゲルダ・ヴィーグナーの絵画は、彼女とその夫で世界で初めての性転換手術を受けた(1930年)リリー・エルベ(本名:エイナール・ヴィーグナー)の生涯を辿るのに最適な材料である。
彼らが画家として活躍したのは1900年代から30年頃にかけてで、ヨーロッパはアールデコ・スタイルがもてはやされた時代である。

アールデコ調ファッション

2人は出身国デンマークだけでなくフランス、主にパリを拠点に、数多くの一点絵画やファッション誌やエロティックな雑誌の表紙や挿絵画家として活躍した。ゲルダの作品はまろやかな曲線美と色調で、なんとなく物憂げな雰囲気を醸し出した耽美的な要素を持ち、夫リリーをモデルとした作品は女装した彼の持つ妖艶さを恐れることなく表している。そのリリー自身はゲルダより4つ年上の風景画家であり、ゲルダと同じ美術学校で絵を学んだ人である。彼の作風はゲルダのものと全く異なり、セザンヌやベルナールのようなポスト印象派に近いものである。数は多くはないが、ゲルダをモデルとして描いたものや、ゲルダと女装した自分と愛犬を絵の片隅に埋め込んだ作品も残している。47歳の時に性転換をしてからはこれまでの人生とは決別するべく絵を描くことも断絶してしまったので、作品はエイナールのサインのもののみ残されている。

ゲルダが描いたリリー

エイナールが描いたゲルダ

 

 

 

 

 

 

ゲルダを撮影するエイナール(男性の格好をしている)

 

絵画という表現手段を用いて性分化疾患だったと言われるリリーを助けたゲルダと、ゲルダのモデルを務め最終的には別の男性のために手術をしてまで女性として生きることを選択したリリーの、夫婦愛(友情といった方が適切か)を感じさせる絵はどれをみても暖かくやさしさが伝わってくる。
女装した男性を女性モデルとして描いたゲルダの作品は、女性をモデルとした伝統的な裸婦の絵を見るのとは違ったイメージを見る側に与え、どれもエロチックではあるがなんとなくコケティッシュに見える。
彼らの作品は個人所有のものがほとんどで、残念ながらどこかの美術館で常備展示されているというわけではない。そこでデンマーク近代美術館は個人所有の作品を取り集め、2015年からゲルダ・ヴィーグナー展を主催し当館を皮切りに世界の美術館を巡回している。

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