ストレスによる精神的疾患を未然に防ぐ – アプリ開発会社と保険会社がコラボ

ストレスによる病気休暇申請がここ近年急増している。
スウェーデン人口は950万人(比較:日本で2番目に人口が多い神奈川県は910万人)、このうち勤労者人口(18-64歳、無職含む)は約600万人である(63%)。社会保障庁のデータによると、2015 年度長期病気休暇を受理している人は 19.5 万人、勤労者人口全体の 3.3% である。

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(社会保障庁:病気休暇受理者の推移。青線が精神的疾患者数。右上がりを見せている。)

病気休暇受理者はここ3年間で40%も増加している。この増加率に加え最近特に重要視されているのが、精神的疾患を訴えるケースが増えていることだ。昨年はこの19万5千人のうち、なんと 40% の人が 「ストレスを含む何らかの原因で精神的疾患を患っている」として病気休暇を受理しているのである。

病気休暇による手当の支払い、代替職員のアサイン(スウェーデンは公務員の占める割合が高い)は国や自治体の財政を圧迫するだけでなく、職場環境にも大きな変化を及ぼす。そして何より、申請者本人そしてその家族も不安な日々を送ることになる。

 

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そんな中、ストレスによる精神的疾患を未然に防ぐ手立てとして開発されたアプリ、「Howdy (ハウディ)」が登場した。
アプリ開発元はデンマークに本社がある Worklife Barometer (ワークライフバロメーター)社である。このアプリはあらゆる職場を対象としており、ユーザーはその従業員となる。2週間おきにプログラムが起動する仕組みになっており、従業員は5つの質問に無記名で答えるだけである。この結果は1か月に一度、仕事に対する満足度レベルが従業員の数で示されたレポートとして人事やグループリーダーに上げられる。そしてそれとは別に、ストレスによる何らかの兆候が見られると分析された従業員に対しては、保険会社が契約するヘルスケア専門家が本人に直接連絡を入れ、電話相談やセラピーサービスを提供することになる。場合においてはさらなる本格的な治療を紹介することもある。つまり自覚症状がない人や、自覚があっても専門医にかかることを躊躇してしまう人を後押し、サポートする仕組になっている。

この「アプリでストレス診断+保険会社のサポート」のテスト結果は次のとおりである。

– 70-90 % の従業員がこのアプリの使用に同意
– 利用者のうち、12-15% の人が不調と診断され専門家から何らかのコンタクトを受けた
– 専門家のアドバイスやセラピーを受けた人のうち、90 % の人がストレス軽減に役に立った、精神的バランスを取るのに役立ったと答えた

 

このようなテストを職場主体で行ったり精神専門家の診断を受けることをネガティブと考えるか、それとも問題を未然に防ぐプラスのためのツールと考えるか。
ストレスも一種の病気ととらえ、それを未然に防ぐことができるのであれば健康診断の一部として対応しようとするのがこのシステムである。そして企業に対しては、職場環境の改善や仕事のやり方の見直しを促す役割を果たす。

インフルエンザにかかっていても頑張って職場に出てくることが美徳と考えられがちの日本の社会ではピンとこないことかもしれない。職とプライベートの切り分けが日本よりできていると言われる北欧で、これだけの精神的障害による病気休暇申請者がいること自体不思議でもあるのだが(制度は利用しなければ損という考えがあるのか、または単に甘えているのか?)、日本でも北欧でも精神的疾患を患う人が増加していることは事実である。ストレスを未然に防ぐためのメンタルケアにもっと積極的にオープンになっても良いのではないか。
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(参考サイト:http://www.worklifebarometer.com/?lang=en)

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