スウェーデンがどこに位置するか記憶があいまいでも、イケアと言えばスエーデン、スウェーデンと言えばイケア、と覚えている人は多い。それほどスウェーデンの知名度を世界中に広めた家具メーカー、イケア。イケアは現在世界中30か国以上に店舗があり、従業員は15万人。本国スウェーデンでは若者の就職希望先企業として例年トップ5に挙げられる企業でもある。
このイケアの創始者はイングバル・カンプラード氏。氏はこの3月30日に90歳の誕生日を迎えられる。イケアは今年創業73年である。彼がイケアをスタートさせたのは17歳。もともとはポストオーダーの会社としてビジネスを始め、2年後に家具の販売へと領域を広めていったのであった。しかし実際には彼は6歳のころから、地元で自転車に乗ってマッチやクリスマス用品、干し魚を売るということをしていた。マッチをバルクでまとめ買いし、それを小分けし人々に売る。人々が喜ぶような安い価格で売ったとしても利益が出る。6歳にして商売のコツを飲み込みんだ彼はまっしぐらにビジネスの世界へ進んでいく。幼い頃からアイデアをもとにビジネスを大きく成長させていく姿はパナソニック創始者の松下幸之助氏を連想させる。
カンプラード氏の商売は家具販売へと転向してからすぐに軌道に乗ったわけではない。家具製作に欠かせない材料仕入れ先各社はこれまで通りの伝統的な家具作りを主張していたため、組み立て式の家具作りという新しいアイデアに反発し、ボイコットをするまでに発展する。国内で協力を得られないのであればということで協力会社を海外に求め、以来フルに海外の製造拠点やロジスティクスを広げ、そして製品はパーツにバラしコンパクトに梱包するというスタイルを確立。現在の成功に至っている。
イケア一号店はストックホルム南部にあり、今でも本店として最大の広さを誇り(6万3200平米)いつ訪れても人で溢れている。人々にとってイケアに行くことが1つの楽しいイベントであるかのような感じさえ与える。海外なら、スウェーデンに行かずともスウェーデンの食品やカルチャー、ライフスタイルに馴染むことができるし、しかも安価である。イケアの貢献度は計り知れない。
カンプラード氏は近年はシニアアドバイザーとして一歩退いた形でイケアと関わっているが、それでも年間225日は世界中を渡り歩いているという根っからの仕事好き人間であるらしい。イケアがこれだけグローバルに成長し利益を上げている所以、資本主義の権化のように彼自身やイケアが、マスコミから叩かれることがままある(スウェーデンが社会民主主義国であるがゆえ。そしてスキャンダラスにリポートするのはどこのマスコミも同じだろう)。しかしながら、今現在でもイケアが株式上場しないのは「イケアは長期的視野のもとで事業を成長させていくものであり、ファイナンシャルな要素に振り回されるものではないという」というカンプラード氏の理念に基づくものである。
カンプラード氏は数年前から生まれ故郷スモーランドに居住地を戻したと聞く。どうか楽しい誕生日になりますように!
(氏に関する出版物はいろいろと出ているので、詳しくはそちらを参考に。)