若者のためのクリエイティブ空間

ストックホルム市もなかなか粋なことをする。こういう空間があることを最近知ったのだが、若者(14歳~25歳)のための遊び空間を文化センター内に用意しているのである。そもそも文化センターそのものの立地条件が良く地下鉄中央駅すぐ真向い。ショッピング街に隣接しておりビルディングそのものがレストラン、シアター、展示ホールなどを抱える。市図書館分室、インターネットサーフィンができるパソコン、ソファーが用意されており、この建物自体が誰もが気軽に入れる雰囲気があるのだが一番奥まったエリアにひっそりとこの若者向けの空間がある。ここには音楽、アート、手芸、料理、コンピュータ、工作など創作に関連するジャンルの出版物と、そして実際に試してみることができる環境が用意されている。具体的にはミシン、工作用具、3Dプリンター、パソコン、イーゼル等々が誰もが使えるようにワークスペースごとに設置されており、必要な材料、例えばハンドメイドコーナーであれば各種ビーズやコードなど、思い立ったら取りあえず何かを作ってみることができるようになっている。部屋自体がワクワク創造力を掻き立てるような雰囲気を醸し出しているのだ。実際に誰かが作ったオブジェクトも所狭しと並べられており「これだったら自分でもできるかな」というような気分にさせてくれるのだ。そもそもミシンや3Dプリンターなど、おいそれと10代の若者が買えるものではない。それを自由に使わせてくれるのだ。ちょっと試してみたいというだけではなかなか購入まで至らない。

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3Dプリンターが雑然としたワークエリアに置かれてあった。foto: Team Ippeki

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クラフトのコーナー。foto: Team Ippeki

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何気にオシャレなサポーター。foto: Team Ippeki

私が訪れたのは土曜日の午後。20代であろうサポーターらしきスタッフが3人いた。話を聞いてみたら「自分達からこうしたらどう?ああしたらどう?と来場 者に問いかけることはない。彼らが質問してきたらヘルプしてあげるくらい。ワークショップを時々行うのでその運営が主な仕事かな。市から特に指示など受け ていない。」と至ってマイペースである。「この空間の目的は何?例えば孤独化する若者のコミュニケーションを図ることなのか」という「目的在りき」的な問 いには、「そういう考えはないんじゃないかな。あくまでもクリエイティブな時間を過ごす場所。もしかしたら友達ができるかもしれないけど。」という感じで ある。こういう雰囲気だから若者が集まるのかもしれない。
この日はワークショップがなかったにも関わらず50人ほどの若者がめいめいに何かを作ったり、ダベったりしていた。ワークショップは楽曲作り、DJ、各種ハンドメイド、3Dオブジェなど自主的に運営されている。市内の高校とプロジェクトを組んでアート作りをすることもあるという。壁張られた作品(テーマは「スタンプで遊ぶ」)は素人っぽいが何気ないセンスがスエーデンらしく、こういった機会を与えることがスエーデン=デザイン王国と言われる由来の一端を担っているのかもしれない。若いときにこういう場所に出会っていたら(!)と思わずにはいられなかった。

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アラン・リックマンの突然の死を悔やんでハリーポッターの本が並べられていた。foto: Team Ippeki

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入口の床には「14歳から25歳の方ご自由に」とある。foto: Team Ippeki

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