ユニークな丸いフォルムをもつこのマシンが、これまでの食事スタイルを変える。
脊髄損傷やストロークのため四肢が不自由になり、自分の手を使って食事ができなかった人々を支援するロボットである。ロボットと聞くと「いかにも」と言ったイメージが湧くのであるが、このマシンはどうだろう。ツヤのある清潔感あふれるホワイト色で、高さも食卓につく人のせいぜい口元程度の高さである。可愛いマスコットのような風情でもある。食べるときはアームが上下左右に振れ、その先についたスプーンで食べ物を口元まで運んでくれる。そう、このフォルムはデスクライトがヒントになっているそうである。
実際に試してみたがコツを飲み込めば操作は至って簡単である。ジョイスティックを使うこともできるし、精神的障害を抱えている人にはワンタッチのボタンも用意されている。
このマシンは、不幸にもポリオのため肢体麻痺を患うヘミングソン氏自身が会社を設立し開発に取り組みできた製品である。だから妥協を許さない。
人の手を借りて食事をすることへの憤り、不便さ、介護人への余計な気遣い、そして何よりプライバシーのなさ。食事をするという行為そのものが苦痛となり、食べ物に対してネガティブになり栄養失調を引き起こす。このマシンが完成に至るまで(写真のものはバージョン3)、氏は奥様の介助を得て食事をしていたという。だがこのマシンを使うようになって以来、氏は自分自身のペースで好きなものから気兼ねなく食べることができ、一方奥様は介助から解放されるので、ご夫婦で一緒に会話をしながら食事ができるようになったという。
このマシンの最大のポイントは 2.5 キロという軽さだろう。コンパクトな流線型のフォルムである。だからバックパックに入れて友人とレストランで外食することも可能である。自分の思い通りの時間に思い通りの場所で家族や他人と食事をすることが普通になる。食事は栄養を摂取するという本来の目的以外に他人とのコミュニケーションを楽しむという大事な要素も持つ。障害を持つ人々をクローズされた世界から開放へ導く、その意義ははかり知れない。そして介護者の負担を軽減することにより、さらにクオリティーの高い介護を目指すことが可能になるのではないか。