介護ロボットをいくつか目にする機会があった。
そのうちの一つ、猫ロボットを紹介しよう。
これは「癒やしロボット」または「セラピーロボット」というカテゴリーに入るロボットである。主なターゲット層は認知症障害を抱えている高齢者である。なぜ「猫」かというと、普段の生活で馴染みのある動物であり、お年寄りが座って抱きかかえるのに大きさが手頃であること。
コンピューター制御部分とバッテリーは一体パックになっており、猫のおなかのジッパーを開いて取り外すことが可能である。制御部分は 個人個人に合わせて用意することができる。猫の外見も、黒猫もあれば、トラ猫もある。もちろん猫が汚れたら、制御パックを取り出して洗濯することができるので衛生面も考えられている。
この猫は触るとミャオと鳴き声を出したり、ゴロゴロと唸り声を出したりする。何もしなくても勝手に猫が鳴いてくれるわけでなく、高齢者自身が猫を撫でてあげる必要があり、それもある程度の力をかけて背中を撫でる必要があり、そのことが高齢者の喚起を起こさせる効果につながるというわけである。
実際にこのロボット猫を「飼っていた」ご老人は、慣れるまでしばらく期間が必要だったが、いったん慣れてしまうとまさに自分のペットとして身近な存在となったそうである。猫の「相手」をすることで、彼に日常生活にリズム・刺激を与え、精神面の落ち着きを取り戻す介護ツールとして、家族も満足していた。正にセラピストとしての役割を果たし、飼い主から可愛がられたこの猫。家族はご老人が亡くなった際、この猫をその脇に一緒に埋葬したということである。